阪神間で新築・販売されているマンションとパッシブハウスはどこが違うのでしょうか
比較したいと思います。
目次
阪神間で新築・販売されているマンションにはどんなマンションがあるの
2018年8月現在、新築、3LDKで考えると
21坪弱であるマンションがたくさん売られています。
価格は3300万円代、3500万円代、4000万円代・・・などなど建設場所により変わります。
又、阪神間で土地がある場合にパッシブハウスを建てる場合、どのような内容になるのか
簡単にシュミレーションしてみたいと思います。
私も阪神間で何度もマンションは設計したことがあるので
よく知っているのですが
他人が設計しているマンションを例に、パッシブハウスと現在の新築マンションレベルとを比較したいと思います。
屋根・壁・床の断熱性は如何ほどでしょう
それぞれのマンション販売用HPには床・壁・天井の構造図が絵入りで書いてあります。
しかし、断熱に関しては、壁だけしか書いていません。
天井は上階の音がどれだけ入ってくるかのことがメインで表現され、
床は設備配管を入れても最終床面がフラットになるかどうかが書かれています。
これは上・下・両サイドにお隣さんの住戸があるので住戸に接する面は基本断熱していないことを示しています。
外壁として以下の様な絵が載っています。
他のマンションでは25mmもありました。
25mmの断熱性能は計算によりU値=0.828W/(m2・K)です。
パッシブハウスの場合は大阪の気象台のデーターをつかって
外壁・屋根・基礎(床)面積の大小により必要なU値が変わってくるのですが
ここでは壁想定をし断熱計算して、U値=0.15W/(m2・K)とします。
パッシブハウスの壁断熱性はマンションと比較して18%の熱移動しかありません
計算式
U値=(0.15÷0.828)=18%
屋根・壁・床の面積比較
戸建住宅は外壁・屋根・基礎(床)の6面から外気・地面に熱が逃げます。
マンションの場合、一般的な住戸はマンション全体の真ん中にあるので玄関側・バルコニー側の2面から外気に熱が逃げます。
各面の大きさが本当は違うのですが
超概算的に言うと
比率=(6面÷2面)=3倍です。
パッシブハウスの戸建て住宅はマンションと比較して熱が逃げる面積が3倍以上です。(超概算)
開口部の断熱性は如何ほどでしょう
窓枠自体の断熱性能は
窓枠を比較したいと思います。
マンションの窓は一般的にアルミサッシ。
法的制限があったり、高層階に取り付ける関係でほとんどアルミです。
アルミの熱伝導率は326W/(m2・K)
パッシブハウスの場合は木製+断熱材、樹脂+断熱材などいろいろあります。
木の熱伝導率は0.16W/(m2・K)
樹脂の熱伝導率は0.2W/(m2・K)
計算式
U値比較=(0.2÷326)=0.06%
パッシブハウスの窓枠はマンションと比較して0.06%の熱移動しかありません
結論的にはアルミ枠は結露しますので、落第点で使用不可です。
結露はカビにつながりますので、不健康な住宅になると言えます。
窓ガラスの断熱性能は
ガラス性能はどうでしょうか。
1. ペア(複層)ガラス
マンションの窓ガラスはガラスの間に乾燥した空気層と書いてあります。
ペアガラス
空気層には乾燥空気6mm×1
金属?スペーサー
このガラス性能U値=乾燥空気6mmの場合は3.4W/(m2・K)ぐらいでしょう。
2. LOW-Eペア(複層)ガラス
「次の100年基準へ」と謳っているマンションのみLOW-E複層ガラスでした。
ペアガラス
シングルLOW-E
空気層には乾燥空気6mm×1
金属スペーサー
このガラス性能U値=乾燥空気6mmの場合は2.5W/(m2・K)ぐらいでしょう。
乾燥空気層が大きくなればもう少し性能UPします。
3. ダブルLOW-Eトリプルガラス
パッシブハウスの場合、私がよく使うのは
トリプルガラス
ダブルLOW-E or シングルLOW-E
空気層にはアルゴンガス16mm×2
樹脂スペーサー
U値=0.6W/(m2・K)又は0.5W/(m2・K)です。
熱を遮断する性能と熱を取り入れる性能のバランスで決めます。
4. ダブル(シングル)LOW-Eトリプルガラス
日本の窓ではこういうのがあります。
トリプルガラス
ダブルLOW-E or シングルLOW-E
空気層にはアルゴンガス16mm×2
樹脂スペーサー
日射遮蔽、4mmガラス、ニュートラル(透明)カラーの場合
U値=0.68W/(m2・K)です。
日射取得、4mmガラス、ニュートラル(透明)カラーの場合
U値=0.97W/(m2・K)です。
ガラスは現在非常に進化しています。
一昔前の単板ガラスと比べて10倍以上熱移動が無いガラスが売られています。
現在主流のペアガラスと比べても6.8倍性能が上がっています。
ガラスが6.8倍上がっても値段はそこまで上がりません。
私が使っているガラスの場合
ガラスのU値を比較すると(0.5÷3.4)=15%となります。
パッシブハウスの窓ガラスはマンションと比較して15%の熱移動しかありません、
U値=0.5W/(m2・K)のトリプルガラスを使えば
夏の冷房時は、外気の暑い熱を85%カットされるという事です。
玄関ドアの断熱性能は
マンションの玄関は阪神大震災以降は地震時の建物変形時に避難出来る様にほとんど耐震玄関ドアになっています。
このマンションでは
断熱性能の表記はありません。というより、鉄製ですし、熱遮断が出来ていない、地震対策用のクリアランスが大きくなっていますので
スキマが多く、気密性には不向きです。。
マンションの玄関ドアはほぼ断熱無表示です。性能表示できていません。
戸建住宅はマンションに比べて法規制が少なく断熱性能がある木製・樹脂製の玄関ドアが使えます。
私が使っているパッシブハウスの玄関ドアの場合は0.9W/(m2・K)です。
パッシブハウスの玄関はマンションと比較にならないほど優秀です。
逆に言えばマンションの玄関は落第点で使えません。
換気の断熱性(熱遮断性)
マンションの換気システムの断熱性能は
マンションに限らず現在の住宅は建築基準法で24時間換気を求められています。
換気の方法は、第1種・第2種・第3種換気という方法があります。
マンションは第3種換気が採用されています。
私が設計したマンションもこの方式です。
最も一般的で、パッシブハウス以外は今まで私もこの方式を採用していました。
マンションの給気口は
第3種換気の場合、リビング・寝室などの壁に上記の給気口を設置して、直接外気を取り入れます。
熱交換が出来ないので直接外気温度で入ってきます。
夏は熱風、冬は冷たい風がほこりと一緒に入ってきます。
私の姉がマンションに引っ越しして、先日行ったら、「ここ(給気口)から熱い空気が入ってくる。ガムテープでふさいでいると近所の人が言っているけど」と言ってました。
「ここは酸素の取り入れ口だから塞いではダメ。ガスコンロを使うのだから酸素が必要。人間にも酸素が必要だから塞がないように」と言いました。
姉は「ここ(給気口)の壁が汚れるのがいや」と言っていました。給気時に外気のほこりが入ってくるので、壁が汚れていました。
この換気方式は上記が難点です。
でも安価です。
パッシブハウスの換気システムの断熱性能は
これが嫌なら、第1種換気しかありません。
私も次にマンション設計するなら第1種換気を薦めます。
値段が高くなりますが性能が違います。
パッシブハウスの場合ほぼこの方式になるでしょう。
その上に熱交換機能付きになります。
80%の熱交換であれば外気温0℃、室内20℃の時
熱交換無い場合は室内は2時間後で0℃の空気に総入れ替えになり、残り20℃の暖房が必要です。
熱交換80%の場合は室内は2時間後で16℃の空気に総入れ替えになり、残り4℃の暖房で済みます。
パッシブハウスの換気はマンションと比較して20%の熱移動しかありません
第1種換気+熱交換換気扇は2個の換気扇がそれぞれ、給気と排気を行い
直接外気が室内に入ってきませんので、住人が暑さ、寒さを感じないのでクレームがありません。
ですから住人が給気口をガムテープで塞ごうと考えません。
また、給気は1ヵ所のダクトから換気扇に入ってきますのでそこを掃除すればよく、壁を汚しません。
換気扇にはフィルターが設置され、虫・PM2.5等が除去できます。
でも高性能のフィルターはフィルター代が必要になります。
フィルター代を節約したい場合は間に「外気清浄機」を付ければ水洗いできるフィルターでほぼ除去できます。
マンションのレンジフードの断熱性能は
排気のみのレンジフードであると思います。
少し親切な場合はレンジフードが動くと気圧が下がりますので、その圧力差で室の給気口が開きます。
給気口から入った空気がレンジフードを通って排気されます。
このルートは室内を通りますので、熱ロスが非常に大きいです。
現在のマンションはほぼこのレンジフードを使って色と思います。
パッシブハウスの換気システムの断熱性能は
「同時給排気レンジフード」で出来るだけ、室内の温度調節された空気を排出しないようにします。
これはレンジフードのスイッチを入れると同時に、給気専用ダクトの入口が開いて上部のスリットから空気が入ってきて(青線部)
レンジフードから排気(赤線部)されます。
よって室内の空気をあまり使いませんので熱ロスが大変少ない商品です。
パッシブハウスのレンジフード換気はマンションと比較にならないほど優秀です。
(マンションによりオプション対応しているところもあります。)
世界最高水準と言われる「パッシブハウス」ですから、性能要求は非常にシビアなレベルを要求されます。
でもこれが快適性・省エネ性へとつながるわけです。
機械は非常に優秀です。便利さはある程度お金で解決できます。
でもお金は限度があるので、どこにお金をかけるかの種々選択が非常に大事です。
出来るだけお金はかけたくない。でも必要な所もあります。
設計者はどんな提案でもしますが最後にお金を出すのは施主である住人です。
住まわれる方、ご主人・奥様、2世帯住宅であればお父様、お母様がパッシブハウスにしたいという思いが無ければパッシブハウスは建ちません。
まとめ
今回は断熱性能のみに注目して、性能比較しました。
次回からは使用エネルギー効率、日射取得性能、健康などの比較をしたいと思います。
今回一般的な新築マンションとパッシブハウスを比較したのは
結婚したとき、まず賃貸マンションに住むことが多いと思います。
そしてしばらくして、自分の家が欲しい。となるようです。
そこで考えるのが
マンションか一戸建てかのどちらかを検討すると思います。
そして
いろいろインターネットで調べて、パッシブハウスを見つける方がおられます。
日本では今だマンションのパッシブハウスが建っていません。
建売住宅のパッシブハウスもありません。
既製品住宅のパッシブハウスもありません。
注文住宅のパッシブハウスしか今はまだありません。
一戸建住宅を最初に選択される方はマンションはいやだと思われているのではと思います。
もしくは郊外でマンションが無い地域の方かもしれません。
雑誌を見て、個性的な形、キッチン等でマンションでないようなものを望まれる方がおられます。
面積もとにかく広くを求める方がおられます。
同時に出来るだけ安くと矛盾だらけの要望が多いです。
マンションは超高級マンションを除くと出来るだけ安い仕様でそれなりのレベルを出していると私は思っています。
マンションはほぼ、自分で決められる部分はありません。
良くも悪くもおしきせです。
しかしプロのデベロッパーが発注して作っているのでコストパフォーマンスが高いです。
面積もシビアな面積です。6帖、8帖なんてキッチリした帖数ではありません。
パッシブハウスと一般的な現在の新築マンション比較を今までしてきました。
見ていただいたように
パッシブハウスの壁断熱性はマンションと比較して18%の熱移動しかしない
パッシブハウスの戸建て住宅はマンションと比較して熱が逃げる面積が3倍である。
パッシブハウスの窓枠はマンションと比較して0.06%の熱移動しかない
パッシブハウスの窓ガラスはマンションと比較して17%の熱移動しかない
パッシブハウスの玄関はマンションと比較にならないほど優秀です。
パッシブハウスの換気はマンションと比較して20%の熱移動しかない
パッシブハウスのレンジフード換気はマンションと比較にならないほど優秀です。
パッシブハウスは新築マンションに比べて5倍?ほど性能高いです。
5倍の性能のパッシブハウスを建てたいのなら、建てられる方法を考えないといけません。
パッシブハウス以外の建築費をUPする要素を出来るだけ減らす。
これが重要と思います。
結論
一戸建てでも一般新築マンション程度の広さ、設備でいいのではないでしょうか。
玄関の広さ
キッチンの広さ、キッチンのグレード
浴室(ユニットバス)の広さ、グレード
洗面所の広さ、グレード
リビングルームの広さ
寝室・子供室の広さを帖数で決めない。家具のレイアウトで決める。
小さな窓をいっぱいつけない。小さな窓は性能が悪くなるのでパッシブハウスでは不可
しかしマンションの寒さ、暑さ、窓が結露するのは我慢できません。不健康です。
夏に暑くなく、冬に寒くなく、経済的なランニングコスト性能はこだわります。
それを実現するのはパッシブハウス性能です。
そこまでいらないとおっしゃるかたはおられます。
私は大きくないコンパクトなパッシブハウスをお勧めします。
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